「じゃ、遠慮なくお願いしようかな」




「…っ」





焦るな慌てるな。ほんの一瞬でいいんだから…っ




別に嫌いなやつなんだから、緊張することもないのに。





自らを落ち着かせようと心の中でひたすら言い続けた。


けどその言葉とは裏腹に、どんどん焦ってゆく私。






バックン、バクン、バクン



心臓がうるさい。



なんでこんなやつに緊張しなきゃいけないの?


これくらい、楽勝なんだから!!



半ばやけくそで私も目を閉じた。




「…」



目を閉じてるからわからないけど、あいつ今笑った気がする…。






「…やっぱやめた」




「は??」



突然あいつが言い出し、私も驚いて目を開けようとした。




だけどその前に。






あいつの指の長い手が、私の前髪をかきあげた。





私の額に温かい柔らかいものが触れ、あいつの匂いが感じられた。



目を開けると、もうすでに私から離れたあいつがいて




勝ち誇って、微笑んでいた。



その瞬間、私は全てを理解して顔が沸騰した。




「な、なななななっっ!?」