「…行こうぜ」
「ああ」
先輩たちは、最後に私たちを一睨みして去っていった。
先輩たちの姿が見えなくなりようやくホッとしたのか、私は体の力が抜け、がくんと膝をついた。
「大丈夫か?牧瀬…」
さっきとは間逆の、優しい声。
おそるおそる顔をあげると、あいつの瞳には殺気ではなく心配そうな色が浮かんでいた。
「…っ、森崎…」
「ん?どうした?」
優しい笑顔で聞き返され、何も言えなくなる私。
そんな私の頭をあいつの大きくてあったかい手が、優しくくしゃくしゃと撫でた。
たったそれだけで、
私は安心してしまって
気が付いたら
森崎葵の大きな体に抱きついて泣いてしまっていた。

