「なっ森崎!!」
先輩たちの驚いた声が誰もいない校舎に響く。
「…ふざけんな…」
どすの効いた低い声。それは私が今まで聞いたことのない声だった。
「ベタベタ触ってんじゃねぇよ」
いつも私を追い込んだ、あの瞳に殺気が宿る。
「も、森崎…」
私の声がかすかに震えた。
だって、こいつのこんなとこ見たことない。
すごく、怖い。
「お前、一年のくせに三年にたてつく気かよ?」
先輩たちは明らかに動揺していて、顔が強ばっていた。
「そうだけど、何?」
その様子を見て、冷たい表情で笑う森崎。
「いい加減その手、離してくんねぇかな、先輩?」
「…っ、ふざけやがってっ」
「バカ、よせ」
殴りかかろうとする先輩をもう一人の先輩が慌てて止めた。
その様子から、こいつがただ者じゃないってことがわかる。
「10数えるうちに、その倒れてる先輩連れてどっか行けよ。そしたら、見逃してやる」

