それだけ私は葵が好きなのに。
朝、玄関を開けて葵がいるのが当たり前になってた。
それがすごく嬉しいことなのに。
来てほしくないなんて、微塵も思ってないのにな。
どうして私は素直になれないんだろう。
葵はこんなに、私に幸せをくれるのに。
明日、謝らなきゃ。
学校行って、直接。
ごめんねって一言。
それだけで葵は許してくれる。
はにかむように笑って、私の頭をくしゃくしゃにして撫でて。
甘い声で私の名前を呼んでくれる。
「いってきます」
翌朝、私は緊張しながら家の玄関を開けた。
いまさらだけど、葵に許してもらえなかったらどうしよう…
不安な気持ちで一歩、踏み出したとき。
「おはよう、璃依」
初夏の日差しのなか、黒髪を涼風で揺らしながら葵はそこにいた。
いつも通り、柔らかく微笑んで、甘い声で私の名前を呼んで。
「…おはよう」
そして私たちは、学校へ歩き始めた。
いつも通り、ちょっと喧嘩しながら…。
END