「…ひっ」
冷たく笑う葵に、男は恐怖のあまり目を見開き固まっていた。
「絶対、許さねぇ」
「あ…、うわあぁぁぁぁあっ!!」
「…大丈夫か、璃依」
優しく私を呼ぶ声で、はっと我に返った。
周りを見渡せば、五人は倒れていた。
「わりぃ、遅くなって…」
「葵…」
申し訳なさそうに私を覗き込む葵の顔には、傷があった。
唇に血がにじんでいる。
「葵…、ケガ、してるの?」
震える手で必死に葵の頬へ手を伸ばし、添える。
すると、一瞬驚いたような顔をした。
けどすぐに、優しい顔になって。
「痛くねぇよ、こんなの」
って言った。
「それよりも、お前が無事でよかった」
さっきまで鋭く殺気の宿っていた眼を切なそうに細め、葵の頬に添えた私の手に自分の手を重ねた。
その手の甲にも、やっぱり血がにじんでいて。
とても痛そうだった。

