翌朝、俺は早めに学校に来ていた。
特に理由はない。
ただ何となく、この迷いに決着をつけたかったのかもしれない。
自然と足が、音楽室前の廊下に向く。
璃依は、こんな俺にも今だに頬を染めてくれた。
永井とのキスを見られ、従兄に璃依をとられて。
それを弁解する余地もなく、俺はあいつから離れてしまった。
いや、言い訳なんてできねぇな。
永井と璃依を見分けられなかったなんて、そんなの。
素直に謝って、許してもらえるだろうか…。
俺は、璃依の居場所を守るのはやめた。
俺の力でまるごとあいつを守る。
もう、決めた。
今思えば、どれだけ情けなかったことか。
思わず、苦笑いをする。
「璃依…」
「やっぱり、ここにいたの。森崎くん」
ふいに、聞き慣れない声がした。
振り返ってみれば、そこにいたのは…。
璃依の友達の、相沢ってやつだった。

