「折り入って、お前に頼みがある」
璃依の従兄は、冷たい水を運んできたウェイトレスにコーヒーを2つ頼むと、物静かな口調で話し始めた。
「璃依のとこに、戻ってやってくれないか」
「えっ」
突然のことに、驚いた俺。
その反応が、嫌がっているとでも感じたのだろうか。
璃依の従兄は、わずかに眉をしかめた。
「どうして急にそんなこと言うんですか」
「嫌か?」
嫌なわけがない。
むしろ、そのことをどれほど望んだことか。
璃依の声が聞きたい。
璃依の笑顔が見たい。
璃依に触れたい。
どれほど望んだか、俺自身わからない。
だけど…
「嫌です」
璃依を守れるのは、俺だけなんだ。
例え璃依が、この従兄が好きだとしても。
俺が裏切ったんだと、そう思って俺を嫌ったんだとしても。
俺が璃依を好きなのに変わりはねぇから。
心の底から、大事にしたいと思える女だから。
誰よりも、愛してっから。

