言いにくそうに目をそらしながら、彼は正直に言った。
そしてそれを聞いてさらに憤慨する男の人を、なんとか止めなければならなくなったのだった。
「よかったな、この子が取り返してくれていて」
実は私は逃げるとき、取られたお金を取り返していた。
それを渡すと、お兄さんも男の子もとても喜んでいた。
なんか、とても大切なお金だったらしい。
「じゃあ、私はこれで。じゃあね」
「あ…っ」
まだ何か言いたげな男の子を残し、私は走り去った。
正直、これ以上兄弟喧嘩にまきこまれるのは面倒だった。
「名前、聞きそびれた…」
そんな男の子の呟きは、私の耳には届かなかった。

