「…ッ」
アイツが近づいて来るから、私は下がるしかなくて。
気が付いたら、背中に壁の固い感触があった。
もう逃げ道はないのに
アイツはどんどん近寄ってきていて、焦る私。
「それ以上近寄ったら、本気でやるよ」
「何それ、脅してるつもり?」
「…もう近寄らないで!!」
私はそう叫んだけど、止まる気配はない。
私は目の前まで迫ったアイツに再び殴りかかっていた。
今度はお腹ではなく、顔面に。
だけどやっぱりそれも手首を掴まれ、あっさり止められてしまった。
もう片方も掴まれ、壁に押しつけられ身動きが取れない。
「や…っ放して…!」
「放さねぇよ」
コイツはまた、力強い瞳で私を見つめた。
「……璃依…」
低い声で優しく名前を呼ばれ、心臓が壊れるんじゃないかってくらい跳ね上がった。
イヤなのに。
こんなのイヤなのに。
こんなヤツ、大嫌いなのに。
どうしてなんだろう…。
嫌がれない…。

