「…大丈夫か?」
ゆっくりとほどかれた腕は、最後まで優しく私を支えていてくれていた。
そして、形の良い唇からは心底心配そうな声が漏れる。
そんな些細なことで、私の心は激しく揺さ振られた。
「…平気。ありがと」
目をそらし、素っ気なく言い放つ。
「そうか。気を付けろよ」
葵は、目の前にいるのが璃依だとわかっているのだろうか。
凜だと思ってるから、こんなに優しいの??
私に対して、こんなに優しかった…??
もっと、意地悪だったよ。
意地悪で、時々優しくて。
ふとした瞬間に、あんまりにも優しい顔をするからドキドキさせられて。
私の中の葵はそんな感じなのに、凜の知ってる葵はこんな風なんだ…。
別にもう、私には関係ないんだけど。

