そして、目の前に迫った曲がり角をそのままのスピードで一気に曲がる。
と、いきなり目の前に黒い塊が飛び込んできた。
もちろん私は、全力疾走していたので止まれるわけもなく。
勢い良くそれに激突した。
「きゃ…っ」
ぶつかった反動で大きくバランスを崩した私は、そのまま後ろに倒れそうになった。
だけどその前に。
がっしりとした逞しい腕が、決して軽くはない私をあっさりと支えた。
その腕が、あまりにも優しくて。
私は一瞬そこに葵の姿を重ねてしまい、目頭が熱くなるのを感じていた。
でもそんなわけない、と淡い期待を捨て去り恐々と視線を上げた。
もうすでに、チャイムは鳴り終わっていた。

