気付いたとき、私の腰と頭の後ろに葵の腕が回されていて。
ふわりと、私の唇に温かいものが触れた。
「…っ??」
葵の、優しくて甘い香りが鼻をかすめた。
驚いて固まっていると
そっと離れた葵が、切なそうな瞳で見つめてて。
胸の奥が熱くなった。
「璃依が、嫌がってないことくらい知ってる。恥ずかしそうに俯いて、やけくそになって言ってくれた時は喜んでくれてるって証拠だから。」
「…っ。じゃあ、なんで??」
「何が?」
「どうして、機嫌悪そうだったの??」
「…聞くんじゃねーよ、ばーか。」
私の頭を、くしゃくしゃと撫でると
顔を反らして歩き出す葵。
「あ、葵??」
「お前の家、着いただろ??俺は帰る。」
葵に言われて、初めて気付いた。
自分の家の前だった。

