「悠ちゃんごめん。俺、昨日」

「先輩謝らないでください。私、その……昨日先輩と一緒に帰れて本当はすごく嬉しかったんです」

「……悠ちゃん」

 うわぁぁあ言っちゃった。
告白紛いのことを……お兄ちゃんもいるのに……。

「……俺、トイレ」

 って、お兄ちゃん!?

 ぱたん。

 静寂。空気が重い。
先輩がなにも言ってくれない。

 私が、もう一度口を開こうとした瞬間、先輩に名前を呼ばれた。

「悠ちゃん」

「はい」

「悠ちゃん、ありがとう」

「……はい?」

 目の前に広がる蜂蜜色。
おでこに、柔らかいものが押し付けられて。
 先輩はいつもより大人びた笑みで私を見つめる。
 逸らすのがもったいなくて、私は先輩の髪より濃い瞳を焼き付けた。

「悠ちゃん、明日一緒に帰ろう?」

「……はい」

「じゃ俺帰るね。あ、飲み物とゼリーあるから食べられる時に食べて、早く寝るんだよ」

「あの、メールありがとうございました。返信出来なくてごめんなさい、先輩のメール見たら寝ちゃってて」