「――ぇえっ! そそんな、女の子が眠ってる部屋になんか入れないって!」

 絶叫で、私は天井を捉えた。
物凄く聞き覚えがあ……る、

「悠、今ので起きただろ。入るぞ」

「ちょっお兄ちゃん待って!」

 制止の声は意味を成さず。
お兄ちゃんだけならここまで抵抗しないのに。

 起きたばかりの身体は、機敏に動けない。
せめて鏡で身だしなみを……。

「こ、ここんにちは悠ちゃん」

「こ、ここんにちは将樹先輩」

「……お前ら、はぁ」

 制服姿の先輩は、顔を真っ赤にして吃るものだから、私にまで緊張がうつってしまう。

 部屋着に着替えたお兄ちゃんが呆れて私たちを見比べ、将樹先輩の背中を小突いた。

「っだ! 遼なにすんだ」

「用件さっさと済ませて帰れ」

 そっか、お兄ちゃんは私が風邪だと思ってるから。
先輩に風邪菌行っちゃったらダメだもんね。

 かさ。コンビニの袋が私に向かって差し出される。
先輩は申し訳なさそうに、言った。もう、顔は赤くない。