「……この木、まだあるんだ」
目的地へ進む途中、在学していた頃のことを思い出していた。
3年のとき同じクラスだった中山くんは、昼休みになるたびにこの高い木の1番上に上って、みんなに自慢していたっけ……子供みたいだ、って友達に笑われていたけど…。
「相変わらず、花はきれいなままだ…」
緑化委員だった村本さんは、派手というよりも地味な人だったけれど、すごく優しくて花が大好きで、いつも誰よりも早く学校に来て花に水をあげてたな……育ててきた花が咲き誇ったとき、村本さんはすごく嬉しそうな顔をしてた…その花は、また誰かが育ててくれているおかげで今もきれいなまま。
まだあたし達が高校を卒業して、数年しか経っていないけど……懐かしい…高校時代の記憶が鮮やかに蘇る。
変わっているようで、変わってない。
あたし達がこの高校にいた、という証は…この高校のあちこちに残ってる。その場所その場所に、想い出がたくさん詰まってる。…そう考えると、胸がすごく温かくなった。
