「立場?何、私が焦ってるとでも思ってる?…私言っとくけど人間に好かれたいなんて思わないから何されても傷付かない自信ある、…けど」



 私は何処まで余裕綽々といった表情を纏っていただろうか。早希の目尻が軽く痙攣した。


「俺はさ、お前の思考とか全部知ってる訳。だから嘗めない方が良いんじゃねぇの?」

「…アンタを?私が?…別に嘗めてないし興味もないし、…さっきの行動の意味も問い質すなんてこともしないよ」

「本当に生きてんのが面倒なんだな。…なぁ、」


 次に早希が口にした言葉に私の空気がぴたりと固まった。明らかにそういう雰囲気ではなかった、というのと、余りにも懐かしい様な感覚を覚える単語であるから。


 “セックスしねぇ?”


 ── と。







 それから暫く私たち二人の間に流れたのは痛い程の沈黙だった。