あのひともあのひとも、そしてこのひとも、一度も私に「愛してる」なんて言ったことがない。

 何を当たり前のことを、乙女みたいにポツリと溢したのかは自分でも良く解らない。そして解る必要があるのかすらも、判らなかった。




「…どうしてアンタは、男居んのに女子高生抱けるんですか」

 声が掠れていた。
 ──最悪、私 声枯れたら中々治らないのに──そんなことを平気で思った。此処に微々たるものであれ、愛があったならば少しは違っていたかも知れない。

「彼氏、ね。…ほら私まだ子供欲しくないし。後々面倒でしょ?」

「そんなこと聞いたん違います、…生理的な問題の、話」

 アハハとそのひとは笑った。愛してもないしセックスフレンドとも呼べない私の側へわざわざ近付いて、ベッドに腰掛ける。私は思わず目を逸らした。

「貴女みたいに中性的な顔の子って好みなの。そうね、…可愛くて両性愛者で更にセックスさせてくれるなんて珍しかったのよ。彼氏に当たれない分貴女にはどんなに酷いことをしたってお金で許してくれるでしょ?」

 確かにそうだった。
 私はお金さえ貰えれば身体もプライドも何もかも捨て去ったって構わないような最低最悪の人間だった。
 自嘲気味に笑って見せる。何だか自分が可笑しく思えてきたのだ。