環は前より明るくなった。笑顔が増えたし、もう青白い顔で登校して来る事も無くなっていた。
オレとカモフラージュに付き合ったせいで、環に言い寄って来る男ももう居なかった。
ここら辺が潮時だろうか。
環の様子を見ていると、もう前の男と別れた心の傷は大分薄れているように感じる。
好きでもないのに、オレが彼氏のフリをしてちゃ環は次の恋をする事も出来ない。
そろそろこの偽りの付き合いも終わりにしようと思い始めていた。
今日の帰りに環にそう話そう。
学校帰りにオレは環を公園に誘った。2人でベンチに座る。
夕暮れの公園で夕陽に照らされてはにかんだように笑う環は、本当に奇麗だった。
そう言えば、ナツとこの公園で遊んだのはいつの頃だっただろう。夕暮れまで遊んだ帰り道、赤い夕陽に照らされるアイツの顔は、憎たらしい程の笑顔で、「誠二のバーカ!家まで競走だよ!ヨーイドンッ!」そう言って走り出したナツを、オレは追いかけていた。
思えばオレは何時だってナツを追いかけていた。あの頃は簡単に捕まえられたのに、今じゃオレはレースからも下りようとしている。
今ナツを追いかけている男はきっとオレだけじゃない、他の奴らだっていつナツに本気になるか分からない。
ナツを失ったらオレは今までみたいに笑えるだろうか?



