「…………せん、せ?」
声をかけていいのか迷ったけど声をかけてみた。
「ん?」
我に返ったようにスケッチブックから私の方に視線を向ける先生。
「どう、したの?」
「あ、ううん。何でもない」
先生は少しだけ笑顔を浮かべそう言った。
「ホントに?」
「あぁ、ホント。俺が空の絵を描く理由は、空が好きだから……ただ、それだけ……」
そう言って、空を見上げた先生の横顔は、やっぱり切なくて……。
ねぇ、先生?
何でもないってホント?
じゃあ、何で切ない顔をするの?
先生は心に何を抱えているの?
ゆっくりと流れる雲を見つめながら、私はそんなことを考えていた。