スケッチブックを次々めくっていく。
次のページも、そのまた次のページも空の絵が描かれていた。
青空もあれば夕焼けや曇り空、いろんな空の絵。
空の絵で埋めつくされたスケッチブックには、ふたつとして同じ絵がない。
ただ、共通してるのは空の絵だってことだけ。
先生は何で養護教諭なんかになったんだろう……。
何で先生は空の絵だけを描き続けてるんだろう……。
「先生?」
「ん?」
先生は遠くを見つめたまま返事をした。
「見せてくれて、ありがとう」
私はそう言って、先生にスケッチブックを返した。
「あ、うん」
スケッチブックを受け取った先生は、それを膝の上に乗せると、パーカーのポケットに手を入れてタバコを取り出した。



