寝転んでいた彼が上半身を起こした。
手を後ろについて私を見る。
「サボるのもいいけど、ほどほどにな」
彼はそう言ってニコッと微笑んだ。
そして、彼は立ち上がり私を見下ろす。
私は彼を見上げた。
「まぁ、何かあったら……」
そこまで言って、リュックを拾い上げた。
「いつでも相談して?なっ?」
そう言うと、リュックを背負い、彼は再び微笑んだ。
「じゃーな!」
彼は手を上げて、私に背を向けてた時「あっ!」と、何か思い出したように小さな声を出して振り返った。
「キミ、名前は?」
「はい?」
「名前、教えて?俺は雨宮雪(アマミヤ ユキ)」
雪って……顔だけじゃなくて名前まで女の子みたい。
「梨音……藤井梨音(フジイ リオン)」
「藤井梨音だね。覚えとくよ」
彼、雨宮さんはそう言うと「じゃーな!」と、手を上げて、再び私に背を向けて歩きだした。
小さくなっていく彼の背中を見つめる。
いつでも相談してって……。
しかも名前まで聞いてきて何なんだろう……。
もう会うことないのに変な人。
そう思っていたのに……。
その後、私と彼が再会することになるなんて……。
しかも“先生”と“生徒”としての再会を、この時の私は知る由もなかった――……。