「口で説明するより、自分が吸ってみて旨いかマズイか判断したほうがいいと思うけど?」
運転席にいるこの人は本当に“教師”という立場の人なんだろうか?
教師が生徒に、成人した大人が未成年の子供に、タバコを勧めるなんて……。
「どうする?吸ってみる?」
なかなか返事をしない私に先生は、タバコの箱を差し出しながらそう聞いてきた。
「先生は先生だよねぇ?先生が生徒に、しかも未成年にタバコを勧めてもいいの?」
「はぁ?だって“タバコって美味しいの?”って藤井が聞いてきたんだろ?さっきも言ったけど、自分で吸った方が旨いかマズイかわかるだろ?」
「そうだけど……でも……」
私は先生の手の中にあるタバコの箱を見つめた。
「どうする?」
先生は私と前とを交互にチラチラ見ながらそう聞いてきた。
先生にあそこまで言われて“やっぱいい”なんて言えなくて、私は先生の手からタバコの箱を取った。



