「家の鍵を持ち歩くのは常識だぞ?」
「そんな常識、聞いたことない」
私は助手席の窓を見たままそう言った。
先生が言った常識は先生の中だけで成り立ってるもんでしょ?
「なぁ、藤井?」
「何?」
「お前、さっき姉ちゃんと電話してたんだろ?」
「そうだけど?」
それがどうかしたの?
「姉ちゃんに電話してみたら?さっきの電話の会話から姉ちゃん、どっか出掛けるんだろ?でも、もしかしたらまだ家にいるかもしんねぇじゃん」
あ、そっかぁ……。
タクヤって男とデートするお姉ちゃん。
男と会うとなると、メイクや髪や服選びの仕度に時間がかかるはず。
私は助手席の窓から車内の時計に視線を移した。
この時間ならまだ家にいるかもしれない。
私は鞄から携帯を取り出して、着信履歴からお姉ちゃんに電話した。



