「わかりました……」



私は溜め息混じりにそう先生に言った。


と、同時に私の腕がフワッと軽くなった。


先生の顔を見ると、普通の笑顔を見せていた。


そして先生は車のロックを解除すると助手席のドアを開けた。



「乗って?」


「……はい」



私は助手席に乗り込む。


先生の香りとは違う芳香剤の甘い香りが鼻を掠めた。


先生は助手席のドアを閉めて、運転席に回り、ドアを開けて運転席に乗り込んだ。


肩にかけてあったリュックを後部座席に置く。


私は自分の荷物を膝の上に置いて、それをギュッと握った。


父親以外の男性の車に乗ることは、もちろん初めてで……。


この狭い空間に、先生とは言え大人な男性と2人きり。


私の胸は、どうにかなりそうなくらい早く脈打っていた。


そんな私の心情なんて知るはずもない先生は、車のエンジンをかけると、駐車場からゆっくり車を出した。