「さぼり癖だけじゃなく、覗き癖もあったとはなぁ」



えっ?


体を少し曲げて車の中を覗いていた体の背筋がピンと伸びた。


背後から聞こえてくる足音。


声の主は先生だってわかってるのに、殺人鬼が近付いて来るような恐怖心が溢れ出し、静寂の中に自分の胸の音だけが響いてるような感覚に陥った。


そして、ゆっくりと振り向く。



街灯の青白い光りに照らされた先生の顔は“ドキッ”とするほど美しくて……。


先生の視線がナイフのように私の胸を突き刺す。



「そんなに俺の車に興味あんの?あっ!それか早く乗りたかったとか?」



先生がクスクス笑う。



「……ちがっ!べ、別に先生の車なんかに乗りたいと思わないもん」



私はそう言って一歩、先生の前に出ると“はい”と車のキーを先生の目の前にぶら下げた。


それを“うん”と言いながら受け取る先生。



「さようなら」



私はそう言って、先生に背を向けた。



「まぁ、まてまて」



先生がそう言って私の腕をガッチリ掴んだ。