ローファーに履き替え、学校の外に出た。
このまま先生を無視して帰ろうか……。
でも私の手には先生から渡された車のキーがあって、先生を無視して帰ることは許されない。
やっぱり私は駐車場に行くしか選択肢がないのか……。
校門に向かうか駐車場に向かうか……。
頭ではそう思っていたのに、私の足は自分の思いとは正反対に駐車場に向かっていた。
青白い光りに包まれた駐車場。
車は1台しか止まってなくて、それが先生の車だとすぐにわかった。
黒のワゴン車。
ピカピカに磨かれたボティ。
確かレガシィって言ってたな。
助手席側の後部座席の窓から、そっと中を覗いて見る。
クッションやヌイグルミとか何も乗ってないシンプルな車内。
運転席のドア側のエアコンの噴き出し口にカップホルダーが設置されてて、そこに黒い筒状の物が置いてある。
あれは何だろう……。
そんなことを思ってると、背後から足音が聞こえてきた。



