「藤井?」
後ろから声をかけられ振り向くと、出入口にある電気のスイッチに手をかけて立っている先生がいた。
「俺さぁ……新任早々、見回りアーンド戸締まりの当番なんだよね。早くしねぇと生徒用の玄関閉めちまうぞ。それか学校に泊まるか?」
先生はスイッチにかけてる手と反対の手で鍵をジャラジャラ鳴らしながらそう言った。
それは困る……かも……。
上履きのまま帰るのも嫌だし。
私は何も言わず、先生の車のキーを持ったまま出入口にゆっくり歩いて行った。
保健室の外に出ると、先生は保健室の電気を消して、ドアを閉めると鍵を閉めた。
そして私に何か言うこともなく、そのままスタスタ廊下を歩いて行く。
私も慌てて、先生との微妙な距離を保ちながら先生の後ろを歩いた。



