握っていた手をゆっくり開く。
「えっ?これって……」
「車のキー。先に駐車場に行ってて?車は黒のだからレガシィだから」
「えっ?ちょっ!ちょっと!困るよ」
本当に困るなら、車のキーを机の上に置いて、ここから出て行けばいいのに、それも出来ない私がいて……。
車のキーを持ったままどうしたらいいのかわからず突っ立ったままそこにいた。
そんな私を無視して、先生はパソコンの電源を落とし、椅子から立ち上がると、着ていた白衣を脱いで椅子の背もたれにかけた。
そして河川敷で会った時と同じリュックをスーツの上から片方の肩にかけ、私の横を通り過ぎて、出入口に向かう先生。



