『ちょっと!梨音、聞いてるの?』
「聞いてるよ」
『聞いてるんだったら、ちゃんと返事くらいしなさいよ!』
「あのさぁ……お姉ちゃん。私、もう子供じゃないんだから家のことは自分で出来るから、お姉ちゃんはデートしてきていいよ」
『だったら最初からそう言いなさいよ!』
お姉ちゃんはそう言って電話を切った。
最初からって……話す隙を与えなかったくせに。
私は小さく溜め息をついて、携帯を鞄にしまった。
私がお姉ちゃんと話をしてる間、先生はパソコンに向かっていた。
「先生?帰るね」
私はパソコンをしている先生の背中にそう言って、椅子から立った。
そして先生に背を向けて、保健室のドアに向かって歩こうとした時……。
「藤井?待って!」
そう背中に声をかけられ、“ビクン”と体が反応したと同時に私の体はピタッと止まった。



