「トイレ、行って来る……」
「1人で大丈夫か?」
私の背中を摩り続ける先生。
まるで悪阻に苦しむ妻の背中を摩る夫みたい。
「うん……」
私は前屈みのまま、ゆっくり歩いて保健室を出た。
保健室の隣にトイレがある。
1番奥の個室に入った。
洋式のトイレの便座を上げて、その前にしゃがむ。
気持ち悪くて吐きたいのに……。
朝から鎮痛剤を飲むための水しか口にしてなくて、何も食べ物を入れてない胃袋は空っぽで、口の中から出て来るのは胃液だけだった。
これ以上、トイレにいても無駄だ。
私はトイレを流して、個室から出ると手だけ洗ってトイレを後にした。



