「美空?どうしたらいい?なぁ、何か言ってくれよ……」
先生が肩を震わせながら墓石に手を伸ばした。
「せん、せ?」
先生は私の声に、顔を上げて私を見上げた。
目が真っ赤に腫れた先生の切ない顔が心をキューと締め付ける。
「せん、せ?」
「梨音?ありがとな。俺の最後のお願いを聞いてくれて……」
私は無言で首を左右に振った。
「帰ろっか?」
先生はそう言いながら立ち上がった。
「美空?また来るな」
先生はそう言って、お墓に背を向けた。
そして……。
先生が歩きだそうとした時……。
フワッと風が吹いた。
春だと言うけど、まだまだ冷たい風が吹く季節。
なのに、さっき吹いた風は、まるで春風のように暖かかった。



