季節は冬から春になった。


3月――。


暦の上では春だけど肌寒く、桜もまだ蕾で、まだまだ咲く気配はない。


あれから両親は進路のことについて何も言わなくなった。


まるで“梨音の好きにしろ”と言ってるみたいに。


両親とは必要最小限だけど会話もするようになった。


でもまだ、両親とのわだかまりが取れたわけじゃなかった。


学校に行くため、まだ咲いてない桜並木を歩く。


通い慣れた道も今日で最後。


通い続けた保健室や屋上に行くこともなくなる。


そう……。


今日、私は高校を卒業する。


そして……。


私はある決意を胸にしていた――……。