「高い物は買ってやれねぇけど、梨音は何が欲しい?」
「うーん……。これといって……」
「えっ?ねぇの?」
「うん……」
「梨音は欲がねぇなぁ」
そう言って先生はクスクス笑う。
そんなこと言われても……。
「女の子なら服が欲しいとか、バッグが欲しいとか、アクセサリーが欲しいとかあるんじゃねぇの?」
「うーん……別に……」
「遠慮してる?」
「えっ?別に遠慮してないよ?」
先生に遠慮してるわけじゃなくて、本当に欲しい物が見付からないだけで……。
あっ!そうだ!
「先生?欲しい物あった!」
「何?」
「ほら、お菓子が入った赤いブーツあるでしょ?。あれがいい」
「はっ?あんなんでいいの?」
「うん。あれがいい!」
小さい頃に、クリスマスになると父親が、お菓子が詰まった赤いブーツをお姉ちゃんと私に買って帰ってくれて、それが凄く嬉しかったんだ。



