「梨音?」
首を左右に振った私に、先生は不思議そうに首を傾げて私を見た。
「どこにも行きたくないの?」
「いや、そう言うわけじゃなくて……」
「じゃー……何?もしかして……美空のこと、気にしてる?」
私はコクンと頷いた。
だってイブは先生と美空さんにとって大切な日なんだもん……。
気にしてないなんて言ったら嘘になる。
先生はパソコンデスクの椅子から立ち上がり、私と前に座った。
「梨音のバカ……」
そうだよ。
私はバカだよ……。
「梨音は本当にバカだな……」
先生はクスッと笑うと、私の体をギュッと抱きしめた。
バカバカ連発しないでよ。
自分でもバカなのはわかってるんだから。
「美空のことは気にしなくていいから……」
「でも……」
「俺、美空との記念日や約束を忘れたわけじゃないよ?」
「うん……」
それはわかってる。
「それに梨音なら美空も歓迎してくれるよ」
「先生……」
「だから……なっ?」
先生は子供をあやすように優しい目で私を見ると、優しく頭を撫でてきた。



