写真を拾い上げて、その写真を表に向けた。
「………っ!?」
声にならない声が出る。
写真に写っていたのは私、じゃなくスケッチブックに描かれていた私に似た女性。
笑顔の女性が写真に写っている。
バックは海でポートタワーが見える。
もう1枚は先生と彼女が頬を寄せ合い幸せそうな2人が写っていた。
バックは夜で夜景が見える。
あ、ここ……。
神戸だ。
ハーバーランドから見た風景と六甲山から見た夜景。
写真を持つ手は震え、目からはポタポタと涙が流れて落ちていく。
“ガチャ――”
玄関が開く音がして「ただいま~」という先生の声が聞こえた。
ヤバい!
心ではそう思っていて、早く写真をスケッチブックに挟まなきゃと思ってるのに……。
手が動かない。
「梨音?」
先生が私の名前を呼びながら部屋に入って来た。
ガサガサとコンビニの袋をテーブルに置いた音が聞こえきた。
パソコンデスクの前で写真を手に持って突っ立たままの私。
「梨音?」
先生の足音が近付いて来る。
「梨音?何して……」
先生の言葉が途中で止まった。
振り向くと、先生は目を見開いて私を見た。
「梨音、それ……」
先生が私が手に持っている写真に目を落とした。



