「楽しかった?」
帰りの車の中、先生にそう聞かれた。
「うん。神戸の街が大好きになった」
それは嘘じゃない。
今日、初めてばかりを体験して、オシャレで素敵な神戸の街が大好きになった。
「そっか、喜んでもらえて良かった」
「うん」
帰りは高速を使わず、海沿いの道を帰った。
先生のアパートに着いた時には夜中で、シャワーも浴びずにベッドに入り込んだ。
海を見ている時と六甲山で私を抱きしめてくれた時の先生の切ない目が頭から離れない。
先生が時折見せる悲しそうな顔、切ない目。
その理由がわかるのは、もう少し先の話……。
私と先生は抱き合うようにして深い眠りについた。



