「なぁ、梨音?」
「ん?」
「大学に行きたくなかったら行かなくてもいいと思うぞ?」
「えっ?」
私は先生を見た。
「だって大学に行きたくないんだろ?」
「うん……」
「だったら行く必要ないと思うし、高卒で就職するのも悪くないと思う。早く社会に出て社会の厳しさや大学では学べないようなことを学ぶのもいいと思うぞ?」
「先生……」
「親の言いなりになって、親の敷いたレールの上を行くだけの人生なんてつまんねぇだろ?失敗したっていいんだよ。沢山の分岐があるレールの上を行って、自分の道は自分で切り開く方が楽しいじゃん」
先生の言葉に胸が熱くなって、涙がポロポロとこぼれていった。
誰も私の気持ちなんてわかってくれないと思っていた。
でも先生だけはわかってくれた。
それが凄く嬉しかった。
「泣くなよ」
「だって……」
「梨音は泣き虫だな」
先生はクスクス笑いながら、私の頬を伝っている涙を優しく拭ってくれた。