唇が離れる。
私の足の横にひざまずき、顔の横に両手をついている先生。
薄暗い中、前に垂れた髪から覗く先生の顔は凄く美しい。
「せん、せぇ?」
先生を呼んだ私の視界は歪んで見えて、瞬きをすると目尻から涙がこぼれていく。
「…………ゴメン」
先生が体を起こして離れた。
キッチンにもたれ掛かって座る先生。
私は上半身を起こして先生を見た。
「ゴメンな……。また……俺、どうかしてるな……」
そう言った先生は力無く笑っていた。
私は何も言わず、首を左右に振った。
先生は何も言わず、ゆっくり立ち上がり、水切りカゴから灰皿を取ると部屋へ戻って行った。



