「梨音……」



先生が小さな声で呟いた。



「えっ?」



今“梨音”って……。


私のこと、名字じゃなくて名前で呼んだ?


私の聞き間違い?



「梨音?」



今度はハッキリと私の耳に“梨音”って聞こえた。


私の聞き間違いじゃなかったんだ……。


そう確信すると、私の胸の鼓動が一気に跳ね上がった。


父親以外の人に名前で呼ばれたことなんてない。


私を優しい温もりで包んでくれてる目の前にいる人は先生で私の好きな人。


付き合ってるわけじゃなく、私の片想いだけど、でも好きな人に名前で呼ばれるのは初めてで恥ずかしい……。


熱くなる顔を隠すように下を向いた。



「梨音……」



先生が私の名前を呼び、手が私の頬に触れた。


体が“ピクン”と反応する。


頬に触れた手は、そのまま髪を後ろに流していく。


先生の優しい眼差し。


恥ずかしくて顔を上げることが出来ずに目だけで先生を見る私。