『藤井?』
機械を通して聞こえてくる先生の声。
男らしい低くて優しい声。
『藤井?どした?』
先生の声を聞いた途端、乾いていた涙が再び一気に溢れ出した。
「せん、せ……」
『藤井?泣いてんのか?どした?何があった?』
「先生……あのね……」
ズルズルと鼻水を啜りながら泣き続ける私。
『藤井?今、家か?』
「……うん」
『今から出れるか?』
「せん、せ?」
『5分で行くから外で待ってろ』
先生はそう言って電話を切った。
通話が切れた携帯を見つめる私。
パタンと携帯を閉じて、財布と携帯だけ持つと部屋を飛び出していた。



