あの時みたいに渋滞もなく、車はスムーズに流れ、先生とあまり会話することなく、車は家の前に止まった。
「今日は早く寝ろよ?」
「うん。じゃーね、ありがとう」
助手席のドアに手をかけた時……。
「藤井?待って?」
「えっ?」
ドアから手を離して、先生の方を見た。
「この前はゴメンな……」
「この前?」
「いや……ほら……無理矢理キスしちゃったから……」
“トクン”と小さく胸が跳ね上がった。
先生、覚えてたんだ……。
「だから……合鍵も家に置いて、保健室にもずっと来なかったんだろ?」
私は“コクン”と頷いた。
「ホントにゴメンな。俺、どうかしてた……。藤井に完璧に嫌われたと思って……」
先生が切なそうな目で私を見る。
「藤井?俺のこと……嫌いにならないで?」
「えっ?」
「頼む……嫌いにならないで?」
私は首を左右に振った。
「ならないよ。先生のこと、嫌いになんてならない」
嫌いになるわけないじゃん。
「よかった……」
先生は私の答えを聞いて、安堵した表情を見せた。



