家の玄関の前に立っていた。
学校から家まで、その間の記憶がない。
でも電車を間違えずに乗って、間違えずに乗り換えもして、駅から家まで間違えずに歩いて帰ってきた。
私の体は、ちゃんと家の玄関前にある。
とても不思議な気分だった。
まるで瞬間移動したような……。
玄関を開けると、ピアノの音が聴こえてきた。
下に目をやると、揃えられたピンク色のスニーカーがあって、母親のピアノ教室の生徒が来てることがわかる。
玄関を入って、右側にある部屋がピアノ教室の部屋。
「ただいま」
誰かが出迎えてくれるわけじゃないのに、いつも律儀に帰ってきたことだけは告げてる私。
ローファーを脱いで、それを玄関の角に置いた。
リビングには行かず、そのまま2階にある自分の部屋に行った。



