私は先生に背を向けたままベッドから出た。
「藤井?」
「帰ります……」
先生にそう言って、先生の顔をなるべく見ないようにベッドの部屋から出た。
「藤井?待って?」
鞄を持とうとした手が止まった。
体が“ビクン”と跳ねる。
振り返って、先生を見ることが出来ない。
「もう暗いし、送って行くよ……」
私は何も言わず首を左右に振った。
「藤井?」
私を呼ぶ、先生の切なそうな声が胸を突き刺す。
再び“キュー”と苦しくなる。
「1人で帰れるから……」
私は振り返ることなくそう言って、鞄を持つと足早に保健室を出た。



