「泣くほど嬉しいか?」



先生がクスクス笑う。


私は肯定も否定もすることなく、落ちていく涙を拭っていた。



「そんな藤井には、もうひとつプレゼントをやろう」


「えっ?もう、ひとつ?」


「はい」



もうひとつのプレゼント……。


先生が差し出してきたのは1枚の小さな長方形の紙。


受け取ると、それは先生の名刺だった。



「裏に俺のケー番とメルアド書いてるから」


「えっ?」



名刺をひっくり返した。


先生の言うように裏には携帯番号とアドレスが書いてある。



「辛い時や苦しい時や寂しい時は、いつでも電話でもメールでもして来い。早朝だろうが夜中だろうが藤井の心が軽くなるまで俺が何時間でも相手してやるから……」



先生はそう言うと優しく微笑んだ。



「先生……」



先生の優しい言葉に、さっきよりも更に涙が溢れてポタポタと落ちていく。


いつもお姉ちゃんと比べられ、学校ではいつも1人の私。


先生の言うように寂しかったのかもしれない。


逃げ場が欲しかったのかもしれない。