「なぁ、藤井?」
「えっ?何?」
「藤井のように嫌なものから逃げるのは卑怯だとか弱い人間だって言うヤツも中にはいる」
確かに私は嫌なことから逃げてばかりいる。
家族、学校、学校の人間関係……。
だから弱い人間だって言われても否定は出来ない。
「でもな、俺は嫌なことから逃げることはいけないとは思わない。だからな、藤井?」
先生の大きな瞳が私の目を見つめる。
私は恥ずかしくて思わず目を逸らした。
「寂しい時には、いつでもここに来ればいい。逃げたい時には、いつでもここを逃げ場にすればいい」
「先生……」
逸らしていた視線を先生に戻した。
先生は優しい表情で私を見ている。
“ポタ、ポタ――”
膝の上に置いていた自分の手の甲に水滴が落ちていく。
私、何で泣いてんだろう……。
拭っても拭っても溢れて落ちていく涙。



