「先生?」
「ん?」
先生はマグカップを口に付けたまま返事をした。
「何で、札を不在中にしてドアの鍵をかける必要があるの?」
素朴な疑問。
「ん?だって……」
先生はお茶を一口飲むと、マグカップを机に置いてそう言った。
先生の答えをドキドキしながら待つ。
「プレゼント渡してる時に、誰かが保健室に入って来て見られたらやべぇじゃん?」
「あー……」
そっか……それかぁ……。
「まさか、お前……。厭らしいこと考えてたのか?」
「えっ?ちがっ!」
恥ずかしさで顔が熱くなっていく。
今、私の顔は多分、トマトのように真っ赤だ。
「お前が望むならヤってやってもいいけど?」
「えっ?」
先生は静かにそう言って、椅子から立ち上がると、私の前に立って私を見下ろした。
大きな瞳が私を捉える。
私は体が硬直したように動けない。
ただ、先生を見上げるだけで……。
「せん、せ?冗談、だよね?」
笑おうとするけど、笑顔が作れない。
まるで笑顔の作り方を忘れたように強張ったままだった。



