「……い!……おーい!藤井?」
「…………えっ?」
我に返ると、先生が手を振っているのが見えた。
「何、ボーとしてんだ?」
「い、いや別に……」
私は保健室のドアの外に出て、ドアの左側の壁にかかってある“任務中”の札をひっくり返して“不在中”にした。
そして保健室の中に入って、ドアを閉めると鍵をかけた。
“ガチャン”
鍵がかかる音が保健室に響く。
車よりは広い保健室だけど、誰も寄せつけないようにした“不在中”の札と鍵。
保健室という密室に先生と2人きり。
いつもサボって保健室のベッドで寝てたくせに、今は早くこの空間から出たい思いでいっぱいだった。
「そこに座れば?」
「あ、うん……」
私は、ゆっくりと歩いて、先生が指差した丸椅子に座った。



