「なぁ、藤井?」
「ん?」
「質問の答えだけど、あれ保留な?今すぐ答えることは出来ないけど、いつか絶対に答えてやるから」
「うん」
「よしっ、いい子だ」
先生はそう言って、笑顔を見せて私の頭をポンポンとすると、再び絵の続きを描き始めた。
私は膝を抱えていた手を後ろについて空を見上げた。
白いフワフワの雲がゆっくり流れて行く。
「出来た!」
「えっ?」
私は空を見上げていた顔を正面に戻してから先生の方を見た。
スケッチブックに目をやる。
色鉛筆で描かれた優しい空の絵。
先生は今描き終わったばかりの空の絵のページをスケッチブックから切り離した。
「これ、藤井にあげる」
先生はそう言って、切り離された空の絵を私に差し出した。
「えっ?いいの?」
「あぁ」
「ありがとう」
そう言って、先生の手から空の絵を受け取った。
先生が描いた空の絵。
ただスケッチブックに色鉛筆で描いただけの絵なのに、私の中では、どんなに高級なものよりも凄く嬉しかった。



