「梨音?学校には行かなかったの?」



私の背中に向かってそう言う母親。



「…………」



振り返りもしないで、階段に足をかけたまま私は何も答えなかった。



「何か言ったらどうなの?」


「関係ないでしょ?」


「私は梨音の親なの。娘が学校に行ってないってわかったら心配するでしょ?」



心配?


笑わせないでよ。


世間体が気になるだけでしょ?


近所の人から何か言われるのが怖いだけでしょ?


それに今更、心配したって……。


今まで私が学校をサボってること知らなかったくせに。



「お姉ちゃんはこんなことなかったのに……。何で梨音は……」



“お姉ちゃん”


その言葉を聞いて私の体が“ピクン”と反応した。



「……もう、ほっといて」



私はそう小さな声で言うと、一気に階段を駆け上がった。