敵なのか味方なのか分からない大きな鳥と出会ってから四、五十分程歩いた時に道の両サイドにうっそうと茂っている木々の間から小さな話し声が聞こえてきた。

 十歳ほどの男の子がとことこと歩いて四人の前に現れる。

「また何か来たのか」
 四人は身構えたが男の子は森の方へ声をかけて、その後こちらに手を振ってきた。

 どうやら普通の人間のようだ。

 こわばらせていた体を緩め、ゆっくりと男の子に近づくとガサガサと音を立てながら森の中から一人の男性が顔を出す。

 距離的には五十メートルほど。
 なかなか四人はそれ以上近づけないでいた。

「もしかして、授かり人様ですか?」

 聞きなれた言葉を聞いて火栄と氷斗は近づいて行った。

「授かり人様のことを何かご存じなのですか?」
 火栄の質問に、
「知っていると言うか、連れてくるように言われているんだよ」

 手に持ったカゴにはたくさんの山菜が入っている。

 男性の頬や腕には土や泥が付いていて、夢中になって山菜を探していたようだ。

「あぁ、これはね、授かり人様がいつ来るか分からなかったから待ち時間に食材調達をしようと思って」

 満面の笑みでカゴの中身を見せてくれる男性は全く害のない普通の人だった。